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 バイク便 「ライダーは労働者」で波紋広がる
 厚労省が都道府県労働局長あてに出した「バイク便ライダーは労働者」とする通達が、業界に波紋を広げている。

 バイク便業界は、会社が個人事業主であるライダーと「運送(業務)請負契約」を結び、配送業務に従事してもらうのが一般的なため、労災や雇用保険などを適用しないケースが多かった。これに対し、一定の要件を満たす契約形態は「労働者性がある」と厚労省が見解を示したことで、事業者は今後、ライダーの雇用か、契約形態の見直しを迫られることになる。ライダーにとっては待遇改善につながる可能性がある一方、体力のない事業者は破綻に追い込まれることも予想され、業界では危機感を強めている。

 同省労働基準局は東京労働局からの照会に対し、「バイシクルメッセンジャー及びバイクライダーの労働者性について」とする通達を出し、自転車便とバイク便の業務実態について判断を示した。同省では「通達にあるような請負契約の場合は、ライダーを『雇用』するか、労働者性の薄い『新たな契約形態』に改善してもらう。改善しない事業所には労基法などに基づき適正な措置を取る」としている。

 ライダーを雇用するなら、労働保険や社会保険の加入のほか、労働時間、残業代など労働法令の規定が適用され、事業者には大きな負担となる。また、指導監督や拘束性の薄い委託契約に切り替えると、ライダーが仕事や勤務時間を選べるようになり、統制が取れなくなる可能性が高い。

 このため、行政が厳格に対応すれば、「体力のない多くの中小・零細事業者が破綻するのは必至」との見方が強いが、同省は「今のところ、事業者からは『困った』と言う声は聞いていない」としている。

 バイク便事業者からは、「既にライダーの正社員化を進めている」「数社で研究チームを設置し、ライダーの福利厚生や待遇の改善に向けて取り組む」との反応もあるが、「ライダーを社員にすることを強制されれば、ほとんどの会社が潰れてしまうのではないか」「完全な業務委託にすると、思った通りの配車ができなくなる」など否定的な意見も多数。「行政が本腰を入れるなら対応を考えるが、しばらくは様子を見る」といった見方も多い。

 問題となるのは「いつまでに改善しなければならないのか」ということだが、同省では「明確には言えない。ライダーとの関係が180度変わる会社もあり、会社の規模にもよるため、すぐにとはいかないだろう」と曖昧な答え。また、事業者からは、「どのような契約なら問題ないのか、ガイドラインを示してもらいたい」との声もあるが、同省では「予定はない。各自で適正な雇用や契約をしてもらいたい」とする。

 事業者の現実的な対応策として、「社員ライダーと完全委託ライダーを半々にする」「労基法の対象にならないよう協組化を検討する」「通達にかからない契約形態を模索する」などが聞かれるが、いずれにしてもバイク便業界は今、「行政がどこまで本気なのか」を見極めようとしている。

 また、同省によると「四輪の貨物軽自動車運送事業者」についても、ドライバーと業務請負契約をしているものの、「通達と同じ使用従属関係が認められる場合なら、改善してもらう可能性がある」としており、今後、軽貨物事業者への影響も懸念されるところだ。

                    (07/11/09)
<記事提供:物流ウィークリー


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