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 強みが一転弱みに 「お荷物」の荷主仕様トラック
 競争の少ないニッチを探し、他社との差別化を図ることは企業の生き残る上で一つの戦略でもある。ましてや資金力の乏しい中小・零細企業では、自社の強みを持つことは、さらに重要な戦略だといえる。しかし、それが時に弱点に変わることもある。埼玉県の事業者は、「差別化といっても、先を見据えておかなければ後で痛い目を見る」と話している。

 同社には、保有台数が十数台にもかかわらず、主力の箱車はもちろん、平ボディー車やユニック車など、さまざまな種類のトラックが並んでいる。すべて荷主仕様に仕上げたためだという。

 15年前に運送会社をスタートさせたが、荷主には同業他社がすでに参入しており、同社は後発組だった。「他社と同じことをしていたら会社は伸びない」と考え、荷主仕様のトラックを作り、同業他社との差別化を図った。

 「例えば、4トンユニック車でゲートの必要のないトラックを欲しがる荷主がいれば、いち早くトラックを準備し、仕事を請け負った」。その甲斐あって、荷主の信頼は徐々に深まっていく。おまけに、荷主仕様のトラックだけに同業他社の参入はなく、トラック1台といえど、ほぼ独占で請け負えたという。

 同社はそのやり方で荷主を増やし、会社を発展させてきた。「後発組の我々にとって、他社と同じことをしていたら稼げない。荷主色に染まるやり方は荷主の懐に入ることもできる」と振り返る。

 しかし、それは同時に大きなリスクとの隣り合わせだった。「荷主の経営がよければ何の問題もなかったが、景気が落ち込み、荷主の経営も不安定になると途端に大きなリスクになった」という。

 それまで使用していたトラックでは大きすぎて運べなくなった。景気低迷で物量が減少した結果だ。荷主は別のトラックを探し、同社がこれまでこなしてきたトラックは余剰トラックとなってしまった。汎用性のあるトラックならばすぐに転用も効くが、荷主仕様で作っているので転用は難しい。「いままで荷主に重宝がられたトラックが、どこからも相手にされないトラックに立場が一気に変わってしまった」とこぼす。

 遊んでいても経費は掛かるということで、いまやそのトラックはお荷物になってしまっているという。「うちにとって荷主仕様の車両も不可欠だが、同時にリスクも大きいため、汎用性のある車両もそろえていかなければならない」と社長は話している。
(12/06/15)



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